となりのおばあさんGinny

  私たちの家は、ひとつの2階建ての建物に4家族が住んでいるコンドミニアムというタイプ。外側のドアは4軒共通で、内側にそれぞれのドアがある。私たちが住んでいるのは、この1階の左側部分。家の前の木は桜のようなもの(?)で、5月初めに満開になる。おばあさんのGinnyと息子のJohnがニューヨーク州から隣りに引っ越してきたのは、1年以上前のことだった。

  うちのようなコンドミニアムは、一戸建てとちがって、老夫婦が多い。以前は一戸建てに住んでいたのだろうが、子どもが巣立った後に引っ越して来るパターンが多い。一戸建ては、日本より部屋も広く、部屋数も多いので、掃除だけでも大変。それだけでなく、芝刈り、芝の水やり、落ち葉掃き、雪かきと重労働。コンドミニアムのような集合住宅は、こういう仕事は全部オフィスが管理してくれるので楽なのである。私たちが住んでいるのは、200軒以上住んでいる結構大きなコンドミニアムなのでだろうか、あまりフレンドリーではない。いい例がハロウィーンだ。子どもたちが「Trick or Treat(お菓子くれないといたずらしちゃうぞ)」とお菓子をもらいに、各家をまわるのだが、うちには誰も来ない! 敷地も広く、ドアが外と内と2つあるのも面倒くさいからかもしれないが、ホントに人っ子一人来ない! ハロウィーンに象徴されるように、うちのコンドミニアムでは、近所付き合いというものがあまりない。私も、同じ建物の3家族と日本人以外ほとんど知らない。ふつうアメリカでは女性も働いて、家にいないからかもしれないけど...

  話はそれたが、隣りに住んでいても、Ginnyとはそんなに会うことはなかった。初めて話したのは、偶然ドアの前で会った時だった。私の家のドアには、小さいリースが飾ってあるのだが、「このリースかわいいっていつも思っていたのよ」と言っていた。

  それからしばらくしてたまたま会った時、「あなたの国はどこ?」「日本」と言ったら、「Johnが日本のものをもらってきたけど、飾り方が正しいかどうかわからないので見に来て」と言われ、初めて部屋に入った。高さ20cmくらいの金色の鶴か何かの絵が書かれているりっぱな扇子がふたつ飾られていた。

Ginnyの部屋
  Ginnyの家は、ソファにおしゃれなクッションが置かれ、その前にある小さなテーブルにはテーブルクロスがかけられ、花瓶にはきれいな花が飾られていた。ダイニングテーブルにはキャンドル、すぐにお客さまがきても料理が食べられるようにかわいいナプキンも置いてある。壁のいたるところに、明るい色彩の大きな油絵が数枚かかっている。アメリカ人は明るい蛍光燈を好まないからか、大きいのや小さいのやかわいいランプがあちらこちらに置かれている。テレビを入れるキャビネットはりっぱなアンティーク。このままインテリア雑誌に載ってもおかしくないようなロマンチックな部屋だった。インテリアコーディネーターになりたかったくらいだから。シンプルな私の家と同じつくりなんて信じられない。

  私の家は西向きだが、南側にも窓がある。でも、窓の前に大きな松の木があるので、日当たりはあまりよくなく、Ginnyの家の方が木がないだけ明るい。日本人は一般に南向きの明るい家を好むが、アメリカ人は家具や絵などに日が当たって色があせるのを気にしてか、日当たりが悪い家を好む。洗濯物も外に干さないので日当たりは必要ないしね。それに、Ginnyの家の前には隣りの棟の建物があるので、私の家の方がプライバシーがあっていいな、Junkoの家に住みたいといつも言っている。そしたら、パテイオ(窓の前のテラス)に、テーブルといすを置いて、バーベキューをするのに...Ginnyに言われたせいもあって、今年はとうとうバーベキューグリルを買ってしまった。

  それからは、Ginnyをお茶に招いたり、一緒にランチを食べに行ったり、クッキーの焼き方を教えてもらったり、食料品の買い出しに行ったり、バーベキューを一緒にしたり。私の想像だが、ご主人が亡くなって、独り者の息子のJohnと住むためにここに越してきたのではないか。Johnの他に息子と娘が近くに住んでいて、時々泊りに行っているが、近所にともだちはあまりいないみたい。何せ、私がLife Saver(救い主)なんだって。しばらく会わなかった時、「Junkoが夢にまで出てきた」そうだ。Nickはそれを聞いて「Junkoだけ?オレは出てこなかったの?」と聞いていた。「出てこなかった」とあっさり言われてたけど。(Nick)シュン。

  Ginnyは運転があまり得意ではない。それに、しょっちゅう道に迷うらしい。家の近くにはロータリーがあるけど、ロータリーが苦手で、月に1、2度ロータリーを通らないといけないファーム(農場の店、野菜や果物がちょっと高いけど新鮮)のパン(大きなのを3斤も!)を買ってきてあげたり、時々、やっぱりロータリーを通らないといけないスーパーに連れていってあげる。

  そういえば、時々、普通の道でなぜか30マイル位ののろのろで、車が何台も渋滞していることがある。よく見ると、先頭を走っているのは、かなりの年配の方。日本でも、高齢者の車の免許の返還が問題になっているようだけど、アメリカは日本以上に車社会なので、年とっても車を運転しないとどこへも行けない。よく新聞で、外出できないシニアのため週1回食料品の買い出しをするボランティアや、病院への送り迎えのボランティアを募集しているのを見かける。

  運転だけでなく、車庫入れも苦手。うちのコンドミニアムには、各家に屋根のある車庫が1台ずつ付いているので、雪の時には車の雪下ろしやフロントガラスの氷かきをしなくてもいいので、とても楽。Ginnyは何回も前進したり、バックしたりしているけどうまく入らないので、時々、私が入れてあげる。

  この前、一緒に買い物に行った時、今日は息子のジョンの誕生日なので、ケーキを焼くんだと張り切っていた。ところが、夜9時頃電話がかかってきて、ちょっと来てと呼ばれた。そしたら、今日はJohnが帰ってこないと、焼いたチョコレートケーキを前に泣きそうにしょんぼりしていた。Johnは出張が多いのか、毎日帰ってくるわけではないのをよくわかっているハズなのだが... ガールフレンドのところへでも行っているのかもしれないけど... ケーキをおすそわけにもらったのだが、Ginnyの作るケーキやクッキーは、それほど甘くないので、日本人の私たちでも十分食べられる。でも、レシピには砂糖1カップとか書いてあるので、たくさん使っているみたいだけど...

  Ginnyは発音はクリアだし、ゆっくりしゃべるので私でも聞き取りやすい。英語学校に通うよりも、会話の勉強になる。でも、英語を話しながら運転するのはいまだに苦手。英語を聞いて、しゃべるのに神経を使い、運転がおろそかになりそうで。日本語だったら全然平気なんだけど...

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